
「SNSキャンペーンの景品って、いくらまで出していいの?」——企画を考えるとき、最初にぶつかる疑問です。
答えを先にお伝えします。
金額の上限は「景品の豪華さ」ではなく「応募のしかた」で決まります。
フォローとリポストだけで応募できるなら、上限はありません。ところが「商品を買った人だけが応募できる」形にした瞬間、法律上の上限がかかります。
この記事では、自社の企画がどちらに当たるのかを、その場で判定できるところまで整理します。難しい法律用語はできるだけかみくだいて説明しますので、法務の知識がなくても読み進められます。
なお、この記事では、キャンペーンで提供する品物・金券・ポイントなどをまとめて「景品」と呼びます。景品表示法で使われている用語です。
この記事でわかること
- 自社のキャンペーンの景品が、いくらまで用意できるか
- 「上限なし」のつもりが上限ありになってしまう、3つの落とし穴
- 応募規約に書いておくべきこと
まず結論:3つの質問で判定できます
難しく考える必要はありません。次の3つの質問に答えるだけで、自社の企画がどの分類に当たるかがわかります。

3つとも「いいえ」なら
オープン懸賞です。景品の金額に上限はありません。よく見かける「フォロー&リポストで◯◯が当たる」は、ほとんどがこれに当たります。
ひとつでも「はい」があれば上限が発生します。企画を作り直すことにならないよう、景品を決める前にこの3つを確認してください。
なぜ応募のしかたで変わるのか
法律(景品表示法)が上限を設けているのは、
「買ってくれた人へのおまけ」にあたる景品だけです。誰でも応募できる企画は、おまけではないので規制の対象外になります。
ポイントは「その企画に応募しようとすると、商品を買うことにつながるかどうか」です。
- 商品を買わないと応募できない → 買うことにつながる → 上限あり
- フォローするだけで応募できる → 買うこととは関係ない → 上限なし
アカウントをフォローしたり「いいね」を押したりする行為は、それだけで商品購入につながるものではありません。だから上限なしで実施できるわけです。
上限はいくら? 分類ごとの金額
「はい」が出た場合、いくらまで出せるのかを見ていきます。
一般懸賞:買った人の中から抽選する場合
レシート応募のように「商品を買った人の中から抽選」する形式です。上限は次のとおりです。
| 対象商品の税込価格 |
景品の上限(1人あたり) |
景品の合計額 |
| 5,000円未満 |
その価格の20倍 |
期間中の対象商品の売上予定額の2% |
| 5,000円以上 |
10万円 |
たとえば税込150円のお菓子が対象なら、景品は150円×20=
3,000円までです。「1名様に10万円分の旅行券」という企画は、この時点で成立しません。
見落とされやすいのが、右側の「景品の合計額」です。1人あたりの上限を守っていても、
全員分を足した金額が売上予定額の2%を超えてはいけません。当選者を増やすときは、必ず合計を計算し直してください。
総付景品:条件を満たした全員に配る場合
「もれなく全員にプレゼント」「先着100名様」という形式です。抽選をしていないので懸賞ではなく、こちらに分類されます。
上限は
200円(対象商品が1,000円未満の場合)または
その価格の2割と、かなり厳しめです。「抽選をやめれば自由になる」わけではない点にご注意ください。
共同懸賞:複数の会社が合同でやる場合
商店街の歳末セールのように、複数の事業者が合同で実施する形式です。上限は1人あたり30万円、合計は売上予定額の3%と、一般懸賞より広めに設定されています。SNSキャンペーンでこの形になることは多くありません。
実務で最も多い、3つの落とし穴
消費者庁は、SNSキャンペーンを想定した具体例を公表しています。そのうち特に間違えやすい3つを紹介します。
落とし穴1:当選確率を上げる特典をつけた
指定のハッシュタグを付けて投稿すると応募でき、
さらに自社商品の写真を一緒に載せると当選確率が2倍になる——という企画。
一見すると購入は条件になっていません。しかし消費者庁は、
商品の写真を撮るために商品を買う可能性が高いので、上限規制の対象になるとしています。
「購入は必須にしていないから大丈夫」と考えて特典をつけた結果、上限に引っかかる。これが最も多いパターンです。
落とし穴2:景品を店舗で受け取ってもらう
友だち登録で応募でき、当選者は
景品を受け取りに店舗へ来てもらう——という企画。
来店が必要になった時点で規制の対象になります。しかも来店すれば必ず受け取れるので、抽選ではなく「全員配布」の扱いです。対象が1,000円未満の店舗なら
上限は200円。郵送にするだけで結果が変わります。
落とし穴3:景品の合計額を計算していない
1人あたりの上限は守っているのに、当選者数を増やした結果、合計が2%を超えてしまうケースです。企画の途中で「もっと当選者を増やそう」となったときに起こりがちです。
法律以外に、SNS側のルールもあります
法令とは別に、各プラットフォームが主催者向けのルールを定めています。違反すると、参加してくれたお客様のアカウントが凍結される可能性もあるため、必ず確認してください。
- 複数のアカウントで応募した人は当選資格を失う、と規約に明記すること
- 「一番多くリポストした人に景品」のように、同じ投稿を何度もさせるルールを作らないこと
Facebook・Instagram
- 「Facebookが後援・運営するものではない」旨を明記すること
- 「友達をタグ付けして応募」「自分のタイムラインにシェアして応募」は認められていません
この「友達をタグ付け」は日本国内でもよく見かけますが、Meta社の規約では明確に禁止されています。企画前にご確認ください。
ステルスマーケティング規制(ステマ規制/2023年10月1日から)
広告なのに広告と分からない投稿は、法律違反になります。規制の対象は依頼する企業側で、依頼を受けたインフルエンサー側は対象になりません。
参加者やインフルエンサーに投稿をお願いする場合は、
「PR」「広告」といった表示を明確に入れてもらう必要があります。口コミ活用の考え方は
これからのSNS活用に必須なUGCとその活用方法とは?もあわせてご覧ください。
応募規約に入れておきたい10項目
応募規約の書き方で迷ったら、次の10項目から埋めていくのが確実です。規約は「あとで揉めないため」ではなく、「あとで実行できるようにするため」に書きます。書いていないことは実行できません。
- 応募期間(開始・終了の日時)
- 応募条件(対象アカウント、応募方法、対象商品の有無)
- 景品の内容と当選者数
- 当選者の決め方と、当選の連絡方法
- 複数アカウントでの応募は無効であること
- 個人情報の使いみち
- 景品の発送時期と発送できる地域
- 投稿された写真や文章を、自社で使ってよいかどうかと、その範囲
- 主催者名と問い合わせ先
- 各SNSが後援・運営するものではないこと
特に大事なのが8番目です。
集まった投稿を後から広告や自社サイトで使いたくなっても、規約に書いていなければ使えません。「使うかもしれない」段階で入れておくことをおすすめします。
よくある質問
Q. デジタルギフトやポイントも対象になりますか?
なります。物だけでなく、現金、商品券、ギフト券、ポイントも同じ扱いです。金額に換算して上限を判断してください。
Q. 「取引価額」とは何ですか?
景品表示法で使われる用語で、
上限を計算するときの基準になる金額のことです。応募の条件になっている商品の税込価格が、これにあたります。本記事では分かりやすさを優先して「対象商品の税込価格」と書いていますが、行政の資料では「取引価額」と表記されています。
Q. 「対象商品の税込価格」が複数ある場合は?
対象商品に価格の幅があるときは、
いちばん安い商品を基準に計算するのが安全です。
Q. 購入は不要で、来店だけが条件の場合は?
この場合の基準額は原則100円として扱われ、景品の上限は200円になります。ただし、その店舗の通常の最低価格が100円を超えると認められる場合は、その金額を使えます。
Q. 値引きやキャッシュバックも景品にあたりますか?
通常の商習慣として値引きと認められるものは、対象外です。たとえば来店した店舗で使える値引券なら、値引きと認められる限り規制はかかりません。
まとめ
SNSキャンペーンの景品の上限は、応募のしかたで決まります。
- フォロー・リポスト・いいねだけで応募できる → 上限なし
- 購入やレシートが条件 → その価格の20倍、または10万円まで。合計は売上予定額の2%まで
- 全員配布・先着順 → 200円、またはその価格の2割まで
- 当選確率の優遇や、店舗での景品受け取りは、上限なしの企画を上限ありに変えてしまう
企画書を作る前に、まず応募条件を決める。そこから景品の予算を決める。この順番にするだけで、後戻りはほとんどなくなります。
なお、個別の企画が規制に当たるかどうかの最終的な判断は、消費者庁の公表資料をご確認いただくか、専門家にご相談ください。この記事は公表されている情報の要点を整理したもので、法的な助言ではありません。
参考にした情報源
SNS Laboでは、レシート応募や口コミ収集など、キャンペーンの実施に必要なツールをご用意しています。企画の設計段階からご相談いただけますので、
ツール・機能紹介もあわせてご覧ください。